2016年05月24日

英国の問題はEU離脱ではなく経済だ

先週まではアメリカドルが強めの展開でしたが、週明けは一服。しばらくは方向感がない展開なのかもしれません。FRBの金融政策が次の相場を作ることは間違いなさそうです。そしてアメリカドルとともに、先週強い動きになったのが、イギリスポンドです。


ポンドは年初からといいいますか、昨年後半から下落傾向。今年に入ってからは下げ幅を広げています。今月は強い動きですが、ここ数ヶ月の通算で見ますと、最も弱い通貨のひとつでした。
イギリスといえばEU離脱が取りざたされており、それが通貨下落のひとつの要因といわれています。個人的には、現状離脱の可能性は低いと見ていますが、リスクとしては考えておく必要がありそうです。そして、下落の基礎となる原因はEU離脱なんかではありません。当然経済の話になります。

イギリスの経済指標を見ていきますと、貿易赤字、経常赤字が拡大傾向です。。昨年4Qの経常赤字のGDP比は、過去最悪に悪化しています。資本フローが過去最大水準の資本流入であることと合わせると、貿易の赤字を、他国からの資本流入でまかなっている構図になっています。つまり自国の経済に対応した生活ができていないということです。化学や観光など成長分野もありますが、金融業が不振、他に強調できる要素がないことがイギリスの弱みでしょうか。アメリカや日本は資源価格下落の恩恵を受け、交易条件が改善しましたが、原油純輸出国のイギリスには恩恵は少なく、金融機関が各国資源企業に融資をしていることを考えると、むしろマイナスの影響が大きいと思われます。これから原油価格が上昇していく局面での貿易関連の指標は要注目になります。

海外からの資本の投入先のひとつが不動産です。ロンドンの不動産価格の高騰しています。どう見てもバブルの状態なのですが、人口の増大と住宅不足が価格高騰を加速させているようです。正直状況としてはかなりリスクの高い状態であると見ているのですが、どうなんでしょうか。各国の緩和政策の影響もあり、投機資金は世界中を飛び回っています。本来ならこういう時ほど、金融政策の出番でしょうが、イギリス当局もゼロ金利を続けている状態で、バブルは野放しにされています。本当に危険な状態です。


イギリスポンドはすでにそこそこの幅で下落していて、これからの下げ幅はある程度限られる可能性もあります。しかし上昇はないでしょう。為替の下落を受け、輸出がどれくらい増加するかで、今後のイギリスおよび通貨ポンドが占えることになりそうです。
EU離脱はともかくとしても、為替の上昇が期待できるニュースはしばらくはなさそうな状況です。長期的な下落の真っ最中にいると考えるのがよいのかもしれません。

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2016年05月20日

アメリカドルインデックスの上昇と限界

アメリカの6月利上げの可能性が高まり、アメリカドルが堅調に推移。新興国通貨には厳しい環境です。アメリカドルインデックスの動きを中心に見ていきます。


せっかくなのでリンクを  →  ドルインデックス(DXY)チャート
アメリカドルインデックスは今月始めに92.5付近まで下落した後切り替えし、現在は95前後の値です。昨年末に100を超える値だったことを考えると、下落しましたが、大きな下落幅とは言いがたい状態です。長期で見れば高値圏、中期的に見れば下落基調、直近は堅調といった動きとなっています。
昨年までの上昇の動きは、FRBのテーパリング開始移行のドル高の動きをそのまま表しています。資源価格の下落の影響もあり、交易条件は改善、雇用も急回復し、アメリカドルの上昇を後押ししました。ユーロと日本円の下落もアメリカドル上昇の要因となっています。
12月の利上げ実行以降は停滞していますが、アメリカドルの高すぎる水準感を表していると考えられます。11月の高値から4月の安値までは10ポイントほど下落、4月の下落は、利上げしないという観測の織り込み方が、やや行き過ぎていた感があります。それ以降の最近の動きは、下落がやや急だったことの反発と、6月利上げの可能性が高まったための動きでしょう。

ドルインデックスの他、経常収支、交易条件指数などを平行してみる限り、アメリカドルの高値感は解消していません。そのため足元の価格上昇は限りあるものになると思われます。上値の余地は難しいですが、100ポイント強程度までを想定しておけば大きくは外れないんじゃないでしょうか。現状が直近の最高値圏にあるという認識を持つことが重要になりそうです。上値は小さく、下落がはじまったら恐ろしいといったイメージです。

最近のアメリカの経済指標は良いようで、消費を中心に経済を立て直している雰囲気です。6月利上げも行われるのではないでしょうか。為替の問題はその後でしょう。利上げしたからといって、アメリカドルの基調も、アメリカ経済の基調も変化するわけではありません。短期での急騰はもちろん考えておかなければなりませんが、より長い期間での方向感は動かないはずです。下落トレンドが再開すると思われます。

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2016年04月01日

中国賃金為替政策の変化

原油価格がいったんの調整局面、為替はまだ明確な方向感がない状態です。
そんな中最近やや影が薄くなった様な気がする中国の話です。わずかですが政策が変化してきたように感じます。


先ず一つ目の変化は最低賃金です。昨年までは最低2年に一回、一回当たり十数%とかなりのペースで最低賃金が上昇してきました。これは昨年まで使用されていた5カ年計画にのっとった内容のようです。今年に入り、その期間が終わったため、上昇ペースが変化することになりそうです。例えば、今年の天津市の最低賃金上昇幅は5%強程度になりそうです。これは当然、賃金が上昇し、業績が悪化していたり、利益がまったく出ていないまま操業を続ける企業を支援する意図があると思われます。中国の賃金は、現段階ではこのあたりが限界なのかもしれません。

もうひとつは人民元のレートについてです。CFETS(中国外国為替取引システム)が発表している、RMBIndexの値が徐々に切り下がっています。3月末の値は98.14で2月末と比べ1.5%減少、これは人民元レートが切り下がっていることを意味します。この値は名目値のようで、中国のインフレ率が他の主要国よりも高いことを考慮すると、減少幅は縮小する(CFETS側の主張)ようですが、それでも切り下がっているのは確かなようです。
輸出企業を支援しているようにも見えますが、理由については不明です。どちらかというと資本流出がある程度目処がついてきたため、為替介入の必要性が少なくなっているようにも感じます。私は、中国人民銀行が、この名目でのRMBIndexの値が変化しないように為替レートを維持していくのかと考えていましたが、どうも違うようです。人民元はしばらくは下落する可能性がありそうです。


中国経済は過渡期の真っ最中です。ゾンビ企業との戦いはまだまだまだ続いていくことでしょう。不良債権処理には痛みが伴います。失業率の上昇は避けて通れない道です。中国経済は、人民元だけなく世界中の通貨に影響を与えます。わずかな指標の動きも注意深く見ていきたいものです。

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2016年03月29日

リートとバブルとリスク

世界中の都市で、不動産価格は上昇しています。ロンドン・シドニー・ニューヨーク・東京、一度バブルがはじけたといわれた中国の各都市でも上昇しています。不動産バブルの懸念があるといわれて久しいのですが、一向に天井を打つ気配がありません。

不動産価格高騰の理由に不動産投資信託(REIT・リート)の存在が考えられます。
不動産への投資というのは、昔から財テクの手段として人気がありましたが、証券化することによって、管理を委託でき、手軽に不動産投資が出るようになりました。小額からはじめられるのも人気の理由でしょうか。
日本では、リーマンショック前後の時期に種類が増え、投資が活発になったイメージがあります。世界的に見ても、新興国を対象としたもののバリエーションが増えるなど資産規模が拡大しています。直近では、債券利回りが大幅に低下していることを理由に、利回りを求める投資も急増していると考えられます。

このリートですが厄介なのが、自己増殖力が強いことです。基本的に投資家からの資金は証拠金になり、金融機関から資金を借りることにより、レバレッジをかけ、不動産の購入、運用をしています。そのため、リートに資金が流入すると不動産価値は高騰、さらに資金を呼び込む形になりやすい構図になっています。当然、下落時にはその逆に動きます。リーマンショック後は金融機関の規制が厳しくなっているため、金融危機になることはないでしょうが、不動産価値が低下した場合には、信用が大きく収縮し、経済を低迷させる作用が強くなると予想されます。

不動産投資自体は実物投資であり、価格には限界があります。対象の不動産の利用者が払える額が家賃収入であり、その家賃を元に、適正な利回りを考え、不動産の価格が決まるはずです。日本がバブルのとき、アメリカの物件をかなりの高額で買い集めましたが、このときの価格は、利回りを考えていなかったとされていて、適正な価格ではないといわれました。現在の価格はどうでしょうか。利回りは適切でしょうか。持続可能な価格でしょうか。バブルのときの日本を批判した方たちは、現状をどう考えているのでしょうか。


不動産価格はしばらくは高騰を続けると考えています、現在の金融政策では仕方ないでしょう。必ずしも悪いことではないのかもしれません。しかし、下落は恐怖です。大規模な金融緩和をする力は、どの国の中央銀行にも残っていません。想像するのも恐ろしい事態が数年後にはやってくることを、しっかりと意識していきたいものです。



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2016年03月25日

WTI40ドル到達の現状

欧米市場が休日のため、平穏な週末です。アメリカドルが高めの、若干のリスクオフでしょうか。
原油市場はWTI5月物が40ドル前後で推移しています。2月の安値26ドル台に比べると50%上昇と上げ幅が大きくなっています。急な上昇で足元で達成感のような感じも見られ、短期での調整や、停滞も考えられる状況です。原油相場の材料を整理します。

先ず、先日発表されたアメリカの原油在庫ですが、在庫量が過去最高を更新しています。増加速度は昨年ほどではありませんが、下げ止まる気配は感じません。季節要因を考えますと、あと1・2ヶ月程度は上昇する可能性が高そうです。アメリカの原油生産自体はわずかながら減少となっています。
ベイカーヒューズ社発表の原油掘削リグ数は、12週ぶりの増加です。中長期での減少基調は続いていますが、取りあえずは下げ止まりました。原油価格が40ドル程度ならばしばらくの期間は運営できる企業が多いのかもしれません。
OPECの月報を見てみますと、OPEC各国の総供給量は先月比わずかに減少も、過去最高水準が続いています。イラクに生産減少の兆しがありますが、経済制裁の解けたイランの生産量が増えています。生産量が多いサウジアラビアが減産させる意思がないと見られ、今後も高い生産水準が続くことになりそうです。
残りの有力産油国のロシアですが、こちらの単独のデータはありませんが、先日サウジアラビア・カタール・ベネズエラ間で、原油生産を1月の水準で凍結すること合意しているため、しばらくはこの水準の生産を維持しそうです。つまり増産はしませんが、減産もしないということです。他の産油国との生産調整の合意に関しては、続報が待たれる状況ですが、どちらにせよ、減産の見込みはないと思われます。

供給側の視点から見ますと、しばらくは現状維持が続き、生産量は変わらないように感じます。生産コストの高い、アメリカシェール業界がやや縮小することが考えられますが、すぐに大きな動きにはならないでしょう。需要側は世界経済の成長に合わせ、順調に拡大することが予想されています。

WTI1バレル40ドルというのは、現状ではちょうど良い水準なのかもしれません。シェールオイルの総生産コストよりは安いものの、初期投資分を除いた、企業としての運転コストよりはやや低い程度と考えられます。この価格が続けば、生産企業倒産のリスクは大きくありません。お金を出している、銀行や投資元からしたら、厳しい状況にはなりますが、企業をまったくの破産に追い込むよりは良いという選択肢が見えてくる水準の可能性があります。


ロシアの中央銀行総裁は、現在の原油価格は維持できない可能性があるとの考えを示しています。在庫が増える中での、価格維持というのは難しいとの考えのようです。現在の生産量が維持されれば、需要が供給を上回るには、1年以上の時間がかかると予想されています。為替市場では、原油価格の再下落の可能性も含め、幅広い状況への対応が求められる環境が、しばらく続くことになりそうです。


タグ:WTI
posted by いわくら at 22:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年03月18日

アメリカ利下げの可能性

FOMCは金利据え置きで終了。為替も多少動きましたが、想定の範囲内でしょう。スイス・イギリス・南アフリカなどの政策金利もとりあえずは予想の範囲内の結果で、一段落着けそうです。

相場の興味はいろいろと尽きない状況ですが、心配なのはアメリカの金融政策の方向性です。今後、政策金利は本当に上昇させることは可能なのでしょうか。
イエレン議長は金利据え置きの理由として、「賃金が上昇していないこと」と「物価上昇が鈍いこと」を挙げました。雇用自体は強い数値を示していますが、政策金利に対してより重要なのは、物価であることは当然でしょう。しかし、この雇用情勢で、実質金利を低い(マイナス)状態を維持するとこには疑問が残ります。名目上は、現在の景況感を見て判断したわけではないようですが、経済状況を予測しての判断も加わっていると考えられます。
アメリカ経済の先行きに関しては、製造業を中心に雲行きが怪しくなっています。今後は現状よりも良い状態が続く可能性は低いのではないでしょうか。6月のFOMCの段階では、今回よりも緩和期待が高まることで、政策金利を上げにくい状況になると予想されます。(もちろん現状では、市場コンセンサス通り、利上げさせる方向性で考えたほうが自然ですが・・・・。)その後のFOMCでは、なおさらそのような状況に追い込まれることになりそうです。

政策金利が上げられない状況という点では、イギリスが先陣を切っています。2015年は雇用が回復し、政策金利を上げる機運が高まりましたが、物価・賃金を理由に先送りしています。現状では、利上げは2017移行がコンセンサスとなっており、それすらできるのかに関心が集まっている状況です。景気が悪化した場合、利下げ(量的緩和)の可能性も焦点になるなど金融政策の先行きは、不安定化しています。これを受け通貨ポンドが下落し、今後も低い水準での値動きが予想されます。

アメリカドルは現状はそれ程売り込まれていませんが、強くはない状況が続きます。この先は資源価格の底打ちから、物価の上昇は期待できるでしょう、しかしそれはアメリカも含めた、先進工業国の交易条件の悪化を示唆します。つまり、弱いスタグフレーションのような状態が、想定されるということです。当然そうなった場合、利上げうんぬんといった話ではなくなってしまうでしょうし、為替も下落する可能性が高まることになりそうです。


今回のFOMCメンバーの想定では、今年中に2回の利上げが織り込まれています。しかし、この想定は回を重ねるごとに緩和的方向に進んでいて、精度はあまり良くないものです。消費の伸びが確認できれば、アメリカ経済は成長が期待できます。しかし現状を考えると、成長を長い期間維持することは難しいと思われます。利下げの可能性を含め、幅広い選択肢のもと、為替予想をする必要性がありそうです。

posted by いわくら at 21:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年03月11日

アメリカ経済指標点検

ECBの金融政策が緩和方向に拡大し、為替相場は不安定気味です。しばらくはこの動きが続くことになりそうです。

より中期的な為替の動きを見たいのですが、なんとなくアメリカ経済が気になったので、経済指標をまとめます。この時期にいろいろと確認しておくことは、今後きっと役に立つはず。

【主な経済指標】
 ・失業率 4.9%     〇   改善中
 ・平均時給 -0.1%   
 ・貿易収支 -456.8億ドル × 悪化中
      
 ・GDP成長率  1.0%  
 ・消費者物価  1.4%   
 ・小売売上高  0.2%  
      
 ・製造業PMI  51.3 × 悪化中
 ・非製造業PMI   53.4 × 悪化中
 ・サービス業PMI 49.7 × 悪化中
      
 ・耐久財受注  4.9%  
 ・鉱工業生産 
 0.9%
  △ 
  
   
元データ 「READING ECONOMICS」     


景況感が悪化していますが、現状の数値はそこそこの感じです。資源価格下落の影響を受け、交易条件が改善しているのに、貿易収支が悪化しているのが、多少気がかりです。やはり、為替は多少割高水準であると思われます。
雇用は好調ですが、雇用の変化には遅効性があるとされ、必ずしも現状を表さないとされています。しかし、現状のこの値なら悪いとはいえないでしょう。着実に数値が改善していることも好材料です。
為替高の影響を受け、内需好調、外需不調といわれていますが、その判断はまだ難しいと思われます。今後の動きをもう少し見たいところです。サービス業の景況感が良くないのはやや意外な印象ですが、個人所得があまり増加していないことも影響を与えていると考えられます。

為替への影響を考えますと、最も重要な指標は失業率です。雇用が悪化するようなことがあれば、すかさず緩和的な金融政策への移行に迫られます。現状その必要はないと思われますが、そうなった場合の影響が甚大なため、その動きにはつねに気をつけていたいものです。

posted by いわくら at 23:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする